AhnLab AI PLUS、AI セキュリティの新たな時代を切り拓く
AhnLab は、ここ最近、独自構築 AI プラットフォーム 「AhnLab AI PLUS」 をリリースした。AhnLab AI PLUS は、AhnLab が30年間蓄積した脅威分析データ、マルウェアおよび侵害事故対応経験などの膨大なセキュリティ情報をもとに開発した自主 AI プラットフォームである。
この記事では、サイバーセキュリティ領域における AI の発展史から、AhnLab が続けてきた AI 革新と AhnLab AI PLUS が顧客に提供する価値までを総合的に紹介する。

AI は、どのように発展してきたのか?
AI の発展のいくつかの転機を考えるとき、外すことのできないものがある。すなわち、囲碁である。2016年3月、AlphaGo とイ・セドル9段の対決により、本格的に AI がこの世に存在を示し始め、以降10年く発展を続けてきた。
AI の観点から囲碁とサイバーセキュリティを比較すると、2つとも相手の戦略を把握し、対応戦略を立てなければならうという共通点がある。しかし、囲碁には明確なゲームルールがあるのに対し、サイバーセキュリティは攻撃者と防御者間の特定のルールによって攻撃と防御が行われない。すなわち、一言で言えば、非常に不確実であると言える。このような観点から、サイバーセキュリティを説明する前に、サイバーセキュリティと類似しているが相対的に単純な囲碁で AI がどのように人間を打ち負かすことができたのかを振り返る。
囲碁における AlphaGo の登場は、自動化(Automation)から知能化(Intelligentization)への転換を示唆する。西洋ボードゲームであるチェス(1997年、IBM Deep Blue)と比較したとき、囲碁で AI が人間を超えるには約20年余計にかかった。このように長い時間がかかった理由は、まさにパターンベースの自動化の限界によるものである。
パターンベースの自動化は、「棋譜」、すなわち、定められたパターンをもとに囲碁の石を機械的に置く方式である。囲碁は場合の数が多すぎてパターン定義が困難であり、石一つ一つの意味と戦略的価値が周囲のコンテキストによって変化する。このような複雑性により、パターンベースの既存囲碁 AI は人間を超えることができなかった。
それに対して、AlphaGo はディープラーニングおよび強化学習を通じて、定められたパターンから脱却し、自ら状況を判断して囲碁の石を置き、人間が予測できない創造的な手で人間を超えた。AI が知能化されたのである。
ここで、自動化と知能化の違いを説明する。
まず、自動化は固定的で反復的な作業の遂行を意味する。人間が定義したルールと流れに沿って作業を反復遂行する概念であり、効率性を高めることができる。しかし、新しくて変則的な状況に対する自主的な対応能力はなく、このような状況を認識した人間がルールを変更する。それに対し、知能化は、機械が自ら状況を判断し、最適な作業フローを探索して環境の変化に適応するものである。したがって、変則にも柔軟に対応が可能である。
AI の発展史は、すなわち、知能化の歴史である。2010年までは機械学習、もしくはマシンラーニング(Machine Learning)を中心に、学習能力の確保に主力してきた。そして、AlphaGo によって明確なルールを持つゲームで状況を把握し、適切な対応戦略を立てる能力において AI が人間を超えたことを知らせた。以降、このような判断能力を不確実性の高い現実世界に適用するための技術発展が始まる。
その第一段階は、言語の理解であった。巨大言語モデル(Large Language Model, LLM)で代表される生成型 AI の登場と共に、言語、音声、画像などで人間とコミュニケーションし、相互作用する基盤を作った。
その後、外部ツールと連携し、実行力を備えるようになった。これをエージェンティック AI(Agentic AI)という。
さらに、囲碁で次に打つ数手を予測し、対応するのと同じように、現実世界でも多段階推論能力(推論型 AI)を活用して以降の流れを予測し、対応する戦略立てる能力を見せ始めた。
サイバーセキュリティでの機械学習、もしくは AI の適用の流れも AI の発展の流れと類似している。2010年代までは、検知、分類、パターン認識に重点を置いてきた。2020年代に入り、脅威を分析、説明し、対応方針を立てるセキュリティ運用業務を補助するツールとして生成型 AI を活用し始めた。そして、ここ最近では実行力を備えたエージェンティック AI 技術を通じて、セキュリティ自律運用の方向に発展している状況である。
AhnLab の AI 革新、すべてのセキュリティ業務の生産性向上
過去、AhnLab の AI 技術は機械学習による脅威検知モデルの開発に集中してきた。機械学習技術を活用し、AhnLab EDR の不正な振る舞い検知、AhnLab MDS のフィッシングメールおよび URL 検知などに対する脅威検知率を向上させることに注力した。検知モデルごとに個別なデータの収集、前処理および学習プロセスを構築し、これらのプロセスを通して開発されたモデルを製品の検知機能に活用した。しかし、この方式にはいくつかの限界点があった。様々な種類のデータを確保し、交差活用する過程で発生するシナジー効果の不在と AI 活用領域の拡大に投入されるコストが減少しないという点などである。
AhnLab はこのような限界を克服するため、AhnLab だけが保有する脅威インテリジェンスと監視分析データを含む各種データを一箇所に集め、1 つの生成型 AI モデルを学習させて複数の機能を提供する構造に革新した。AhnLab だけが保有するセキュリティデータを含むため、一般的な生成型 AI とは異なり、セキュリティに特化した AI であるという差別化要素を持つ。

[図1] AhnLab の生成型 AI 動作構造
AhnLab は AI 適用による生産性革新で、過去の脅威検知機能だけでなく、▲コンテキスト説明を提供するマルチモーダル検知 ▲対話型分析およびセキュリティ運用サポート ▲診断から対応まで、総合的なガイド提供 ▲分析レポート生成機能まで、セキュリティ業務全般の生産性を改善する方向で AI の役割を拡大している。
AhnLab AI PLUS 発売、すべてのセキュリティ業務の生産性向上
その一環として AhnLab は2025年第1四半期、自社のデータと AI 技術を集大成した AI ベースのセキュリティプラットフォーム「AhnLab AI PLUS」を発売した。
AhnLab AI PLUS は AhnLab が30年間蓄積した脅威分析データ、マルウェアおよび侵害事故対応経験など、膨大なセキュリティ情報を基に開発した独自の AI プラットフォームである。▲生成型 AI および LLM ベースの知能型セキュリティ検知・分析強化 ▲様々な製品・サービスへの適用で AI ベースの運用拡張 ▲自社収集データを基にした学習システムで高度化された AI サービス提供およびセキュリティ性確保、等により自社製品およびサービス全般の AI ベースの知能化を実現していく計画である。
AhnLab AI PLUS の構造を見てみると、膨大なセキュリティ情報を内部データレイク(Data Lake)で中央集約し、データの加工およびモデル学習のプロセスを経て、セキュリティ特化型 LLM と知識データベースを構築した。LLM と知識検索機能を API サービスでアプリケーション層に供給する。また、データとモデルの信頼性、リスク管理、セキュリティを考慮し、ガードレール(Guardrail)を適用して AI によって発生する可能性のあるリスクを最小化する。
AI はアシスタント(Assistant)形式でサービスされ、▲AIベースの検知&分析(AI Agent for Detection) ▲脅威インテリジェンスサービス(AI Agent for Threat Intelligence) ▲製品運用補助(AI Agent for Operation)で役割を区分して提供する。そして、アシスタントを連携させて統合セキュリティ運用を担う Orchestrator AI を開発中である。
最後に、これらすべてを AhnLab の AI ポータル(AI Portal)を通じて確認することができる。

[図2] AhnLab AI PLUS 構造図
顧客の立場から AhnLab AI PLUS を初めて接すると、様々な疑問が生じるものと考える。そこで、最も基本的な三つの質問に対する回答を以下のように提示する。
#1. 既存の AhnLab AI と何が違うのか?
AhnLab AI PLUS は生成型 AI と LLM 技術を適用し、既存の機械学習/ディープラーニングベースの検知技術を一層高度化した。ファイル、URL、振る舞い情報、スミッシングメッセージなど、様々な形式の非定型データを分析し、脅威発生の原因と攻撃方式を深層的に把握して、検知結果と対応ガイドを同時に提供する。
これにより、セキュリティ担当者はセキュリティイベントをより直感的に理解し、素早く脅威要素を識別できる。また、セキュリティ運用の正確性と対応速度が向上し、様々な脅威状況でも効率的な対応が可能となる。
#2. セキュリティソリューションにどう適用されるのか?
AhnLab XDR に AI セキュリティアシスタント「Annie」を連携し、AhnLab AI PLUS の適用を開始した。製品 UI で対話型 AI セキュリティアシスタントを提供し、リアルタイム脅威検知、対応策(プレイブック)提示、追加質問推薦など、セキュリティ運用をサポートする様々な機能が搭載された。これにより、顧客は複雑な脅威環境でもセキュリティ状況を容易に把握し、より迅速で体系的な対応体制を構築することができる。

[図3] AhnLab XDR に適用された AI セキュリティアシスタント
AhnLab AI PLUS は AhnLab XDR だけでなく、AhnLab の様々な製品やサービスにも適用できるように設計されており、今後様々な製品やサービスに AI 適用を拡大していく予定である。
#3. モデル学習にデータ漏洩等のセキュリティ懸念はないのか?
AhnLab AI PLUS は、顧客データを収集や活用せずに、AhnLab のマルウェア分析、侵害事故対応のノウハウと AhnLab TIP および AhnLab Smart Defense(ASD) インフラを通じて収集したファイル、URL、IP、振る舞い情報等のビッグデータとセキュリティインテリジェンスを活用して学習を行い、AI サービスの品質を向上させている。顧客は保有しているデータの漏洩懸念なしに、AhnLab が蓄積した膨大な脅威インテリジェンスを基にした高水準の AI サービスを提供されることができる。
Next Step、今度はセキュリティの知能化
AhnLab は AI の高度化を重ね、セキュリティの知能化の完成度を高めることを目標にしている。事前に定義されたシナリオ通りに検知、分析および対応することを越え、AI がコンテキストを把握し、プロセスを自ら計画して実行するという概念である。セキュリティ業務全般に提供するいくつかの生成型 AI 機能を統合し、コンテキストに応じた適切な実行フローを AI が自ら設計して実行することが、究極のセキュリティ知能化の姿である。

[図4] AhnLab の生成型 AI および Agentic AI 技術活用
[図5] AhnLab の Agentic AI 概念図
そのために、前述の ▲AI ベースの検知 & 分析 ▲脅威インテリジェンスサービス ▲製品運用補助、3つの役割を担う AI エージェント(AI Agent)を開発中である。志向点は、1つの統合エージェントが計画を立て、複数のAIエージェントと有機的にコラボレーションし、一連の作業を実行する自律的なセキュリティ運用システムを実現することである。AI エージェントベースのセキュリティ運用システムの完成度が高まると、人のための AI の支援が最適化され、顧客のセキュリティレベルとビジネスの生産性向上につながるものと見込まれる。